海運業界:船員不足で日本の物流が止まる危機に向き合う
物流危機「海運業界の人手不足解決」への取り組み
現在、少子高齢化の影響により、さまざまな分野で課題が山積しています。
私たち医療・介護事業者にとっては特に身近な問題ですが、きっと他の業界においても、この課題に直面し、解決に向けた取り組みが進められていることでしょう。
当然ながら、私たちもこの社会的課題の解決に貢献する責務があります。
その中でも、私たちは 超高齢化社会がもたらす課題のひとつとして、海運業界における人手不足問題の解決に向けて取り組んでいます。
なぜ海運業界なのか?
まず、我々がこの課題に取り組むにあたって最も優先すべき基準は、取り組む社会的意義が非常に高いということです。
当然、企業として収益を長期的に確保する必要性はあります、しかしそれは二番目、三番目の判断基準となります。
一般的に、医療・介護業界では、患者や利用者に対するサービスの質を向上させることに注力しています。
もちろん、私たちもこの点において日々努力を惜しみません。
しかしながら、医療の専門家として果たせる役割は、それだけにとどまりません。
経済的合理性だけで判断するのではなく、私たちが社会に貢献できる分野があるならば、その役割を果たすことこそが私たちの存在意義であると考えています。
「海運」と聞いて、どんなイメージを持ちますか?
日本は貿易と物流によって支えられている国です。
エネルギー資源に乏しい日本にとって、海外からの原油やLNG(液化天然ガス)の輸入は不可欠であり、食料や生活物資を含めた貿易物流の約90%は海運によって運ばれています。
また、国内の物流においても、海運は陸運に次ぐ第二のシェアを占めています。
特に エネルギー資源、原材料、車両などの輸送は、海運なしでは成り立ちません。
このように、海運は日本の経済と生活を支える極めて重要な基幹産業です。
しかし、この分野においても高齢化の影響が深刻化しています。
いわゆる「物流危機」と呼ばれるこの課題では、海運業界における船員の高齢化と人手不足が進行しており、船の運航ができなくなる船会社も出始めています。
現在、船員の平均年齢は45歳であり、半数以上が50代以上という状況です。
さらに、多くの船員が生活習慣病をはじめとする健康問題を抱えています。
船員の労働環境とは?
船員の仕事について少し説明すると、
船は24時間体制で運航され、三交代制で勤務します。
乗船期間は約3か月間におよび、そのほとんどを海上で過ごします。
また、乗組員は固定されているため、人間関係の問題が発生した場合のストレスは一般的な職場よりも過酷になりがちです。
さらに、船内は狭く、運動不足になりやすい という特徴もあります。
こうした環境の中で長年働いてきた船員の多くが 生活習慣病やメンタルヘルスの問題を抱えている のです。
特に、慢性的な持病を持つ船員が、乗船期間中に医薬品を不足させる問題が発生しています。
さらに、人手不足の影響で、予定されていた3か月の乗船期間が急遽1か月延長されることもあるため、問題はさらに深刻です。
医薬品を入手するには医療機関を受診する必要がありますが、それが叶わず、乗船中に体調を崩す船員も少なくありません。
未来に向けて
かつて7万人いた船員は、現在2万人にまで減少しています。
このままでは、日本の物流が立ち行かなくなる可能性が高く、早急な対策が求められています。
幸いなことに、2024年4月の船員法改正により、「船員向け産業医制度」がスタートしました。
この制度によって、船員の労働環境の改善が進むことが期待されています。
私たちは、この船員向け産業医制度における「船員の健康確保に関する検討会」の座長を務めた久宗修二教授らとともに「研究会」を発足し、船会社の協力を得ながら、さまざまな取り組みを行っています。
海運は、私たちの暮らしを支える極めて重要な産業です。
株式会社ヒゴケンは、医療事業のドメインを活かし、「健康」の側面からこの社会課題の解決に取り組んでいます。
私たちは、船員が健康で安心して働ける環境を構築するための支援ができると信じています。
活動内容
株式会社ヒゴケンでは海運業界の人手不足問題を解決するための取り組みとして下記の活動を行っています。
船員健康研究会
日本の海運業界では、少子高齢化の影響により船員不足が進行し、将来的に船舶の運航に支障をきたす可能性が高まっています。その背景には、船員の高齢化による引退の増加、高齢船員の健康問題、そして過酷な労働環境による若年層のなり手不足といった課題があります。「船員健康研究会」は、専門家・有識者によるこうした問題の解決を目指し、船員の健康維持や労働環境の改善を通じて高齢船員の健康支援、職場環境の改善、若年層が魅力を感じる仕組みづくりの提案を進め、持続可能な海運業界の未来を築いていきます。
船員健康研究会メンバー一覧
- 船員労働科学研究所
電話番号: 070-8334-3865 https://www.wib-or.com/ - あおばおうちクリニック
電話番号: 050-3774-3191 https://aoba-zaitaku.net/ - 株式会社ヒゴケン 西部調剤薬局
電話番号: 078-575-6177 https://hm-labo.jp/ - 株式会社おうら海運
電話番号: 078-330-7802 http://olakaiun.com/