船員が抱える薬の不足問題とは
内航船員は通常、2〜3か月の乗船期間を想定し、最大で180日分の医薬品を携帯して乗船することが一般的です。しかし、近年の船員不足により乗船期間が延長されるケースが増えており、あらかじめ準備した医薬品が不足する状況が生じています。特に船員の平均年齢は45.4歳と高く、糖尿病や高血圧といった生活習慣病を抱える人が多いため、定期的な服薬が欠かせません。
また、船が寄港する機会はあるものの、多くの場合、医療機関の診察時間外であったり、荷揚げ作業後すぐに出航しなければならなかったりするため、受診や薬の確保が困難です。こうした状況の中で服薬を中断すれば、病状が悪化するリスクが高まり、船員の健康を維持することが難しくなります。このような背景から、船員が乗船中に医薬品を確実に入手できる仕組みが求められています。
オンライン診療&オンライン服薬指導の必要性
船員の医薬品不足の問題を解決するためには、時間や場所にとらわれないオンライン診療とオンライン服薬指導の活用が有効な手段の一つです。寄港地での受診が難しい船員に対し、産業医がオンライン診療を行うことで、乗船期間中に必要な医薬品を処方できます。さらに、薬局によるオンライン服薬指導を受けることで、船員は最寄りの寄港地などで医薬品を受け取ることが可能になります。
また、船員の健康を守るためには、単なる医薬品の提供だけでなく、長期的な服薬管理や健康支援が重要です。そのため、オンライン服薬指導を行う薬局では、船員の労働環境や健康リスクに関する教育を薬剤師や事務員に実施し、適切な指導を行う体制を整えています。さらに、薬局は船員向けの産業医とも連携し、服薬管理や健康相談を通じて中長期的に船員の健康を支える仕組みを構築しています。このように、オンライン診療と服薬指導に加え、産業医との連携を強化することで、より充実した健康サポートが可能になります。
実際の活用方法
船員の方が乗船中に携帯している医薬品が不足することが判明した際、まずオンライン診療を申し込みます。乗船期間中は医療機関への受診が難しいケースが多いため、スマートフォンを利用して産業医のオンライン診療を受けることで、診察を受けることが可能です。
診察後、必要と判断された医薬品の処方せんが発行され、薬局へ直接送られます。その後、薬剤師によるオンライン服薬指導を実施し、船員の方の健康状態や労働環境を考慮した適切な服薬管理について説明を行います。
服薬指導が完了すると、処方された医薬品は船員の方が指定した最寄りの寄港地へ郵送されます。これにより、船員の方は乗船中でもスムーズに必要な薬を受け取ることができ、継続した服薬が可能となります。
この仕組みにより、船員の方が健康を維持しながら安心して業務を続けられるよう、医薬品の提供と服薬サポートを行っています。
乗船中のオンライン診療&服薬指導の流れ

乗船中に発症した病気や怪我について
医療費(保険診療)の負担が無料になります
船員保険の被保険者の方は乗船期間中(原則として船舶内)に発症した病気や怪我について医療費負担が無く受診することができます。
医療機関に受診する際、本制度を利用する旨をお伝えください。
所属する会社に「船員保険療養補償証明書」を発行を依頼し、会社より受診した医療機関(病院、薬局など)に郵送でお送りください。
※本対象は保険診療を行った場合となります。オンラインシステム利用料、薬の送料は別途発生します。
ご利用の手引き動画
西部調剤薬局で提供する「船員向けオンライン服薬指導」導入案内の動画です。
オンライン診療アプリ
オンライン診療を受けていただくためのアプリはいくつかありますが、ここでは「Yadoc」を紹介いたします。
Yadocは医療機関と患者が1on1で繋がる、かかりつけ医に適したオンライン診療システムであり、生活習慣病をもつ船員に対して長期で健康管理を行っていくために非常に適したアプリです。

オンライン服薬指導アプリ
西部調剤薬局をご利用いただく際のLINEを活用したオンライン服薬指導アプリ「お薬連絡帳」をご紹介します。
薬局とLINE友達になることで、普段LINEを使っている感覚で薬局とコミュニケーションがとることができるので、スマホの使い方に不安のある方でも安心して利用できるアプリです。

活動内容
株式会社ヒゴケンでは海運業界の人手不足問題を解決するための取り組みとして下記の活動を行っています。
船員健康研究会
日本の海運業界では、少子高齢化の影響により船員不足が進行し、将来的に船舶の運航に支障をきたす可能性が高まっています。その背景には、船員の高齢化による引退の増加、高齢船員の健康問題、そして過酷な労働環境による若年層のなり手不足といった課題があります。「船員健康研究会」は、専門家・有識者によるこうした問題の解決を目指し、船員の健康維持や労働環境の改善を通じて高齢船員の健康支援、職場環境の改善、若年層が魅力を感じる仕組みづくりの提案を進め、持続可能な海運業界の未来を築いていきます。
船員健康研究会メンバー一覧
- 船員労働科学研究所
電話番号: 070-8334-3865 https://www.wib-or.com/ - あおばおうちクリニック
電話番号: 050-3774-3191 https://aoba-zaitaku.net/ - 株式会社ヒゴケン 西部調剤薬局
電話番号: 078-575-6177 https://hm-labo.jp/ - 株式会社おうら海運
電話番号: 078-330-7802 http://olakaiun.com/